検査システムの測定がうまくいかないとき、まずカメラが疑われます。しかし弊社の経験では、真のボトルネックは多くの場合レンズ側にあります。センサーはレンズが結像したものを記録するだけで、測定値の信頼性はレンズの3つの性質で決まるからです。
1 — ディストーションが幾何誤差の下限を決める
ディストーション(歪曲収差)は幾何学的誤差です。直線を曲線として結像します。100mmの視野で±0.1%のTVディストーションを公表するレンズは、キャリブレーション前に視野端で0.1% × 50mm = 50µmの誤差を持ちます。キャリブレーションで残差は減りますが、それは校正点を置いた場所だけ。点間の局部ディストーションは誤差として残ります。
目安は、許容公差に合わせてディストーションクラスを選ぶことです。有無検査なら±3%のFAレンズで十分、寸法検査なら±0.1%、計測用途なら0.05%以下またはテレセントリック級の設計を選びます。
2 — レンズのMTFはナイキスト周波数を超えなければならない
5µm画素のセンサーのナイキスト限界は100 lp/mmです。レンズがナイキストで30%のMTFを持てば1画素レベルの特徴は生き残りますが、0%なら消えます。カメラが「5µm画素」でも、です。依頼すべきは、使用するナイキスト周波数・実際に測定する視野位置(周辺部)・使用絞りでのMTF値。弊社の仕様書はまさにこの形式で記載しています。
3 — 相対照度がノイズフロアを動かす
相対照度(RI)は周辺が中心より何%暗いかを示します。RIが低いとカメラゲインを上げることになり、欠陥しきい値が最も厳しい周辺部ほどノイズが増えます。計測用途では絶対値より個体差の小ささが重要です。ロット替わりのしきい値調整をなくすためです。
4 — 絞り:被写界深度と回折のトレードオフ
絞ると被写界深度は得られますが、回折で解像力を失います。緑色光の回折限界はF5.6で約320 lp/mm、F8で約230 lp/mm。開放ではコントラストが得られる代わりにワーク面の揺れに対する余裕が失われます。計測ステーションではF4〜F5.6と、作動距離を一定に保つ治具を推奨します。
現行ステーションの60秒監査
- 画素ピッチからナイキストを計算し、視野端でのレンズMTFを確認する。
- 仕様書のTVディストーションを自社視野でのµmに換算し、公差÷5と比較する。
- 相対照度を確認する。計測なら約70%以上、またはしきい値マージンを検証。
- 作動距離範囲が機構スペースをマージン込みで覆うか確認する。
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